人間科学科

Department of Human Sciences

【人間科学科】工藤与志文:教員紹介

2008.04.01

お知らせ

工藤与志文:教員紹介

工藤与志文:教員紹介


専門は「教育心理学」、特に教科学習の心理学的問題に興味をもっています。「教育」や「数学、理科などの教科学習」がどうして心理学と関係するのかと、不思議に思われるかもしれません。しかし、みなさんは「どうも今日の授業はわかった気がしない」「今日の授業はとってもすんなり理解できた」「わかっていたつもりなのに、説明させられたらできなかった」などといった経験をすることがあるでしょう。「わかる」とか「わからない」というのはあくまで主観的な感覚ですが、それには何か理由があるに違いありません。そしてまた、同じ授業を受けても、わかる人もいればわからない人もいることから、「わかる/わからない」という感覚は、学習者個人の頭(心)のはたらきと無関係ではあり得ないことがわかります。このように、「わかる/わからない」ひとつとっても、心理学の立派な研究テーマになるわけです。教育の世界には、このように心理学の研究テーマがゴロゴロ転がっていると私は思っています。

私が人間科学科で担当している科目は「教育心理学A」「教育心理学B」「教育方法論」です。教育心理学Aでは「発達」と「教育」の関係を取り上げます。教育的経験をほとんど与えられないまま育った子どもはどんな発達を示すのでしょう。人間の発達のみちすじはあらかじめ決まっていて、教育によって影響されることはないというのは本当でしょうか。このようなトピックを取り上げます。教育心理学Bでは、学校の授業における学習の問題を取り上げます。「おぼえることイコール暗記すること」というのは本当でしょうか。問題を解くことが「できた」ということは「わかった」ことを意味するのでしょうか。学校の先生はなるべく教えないで、生徒に考え出させた方がよいというのは本当でしょうか。このような問題について考えてみます。教育方法論では、ものづくりの方法と教育の方法の違いについてとりあげます。その違いとは、教育は「人間」を相手にしているということです。教育の方法は、相手の出方次第で柔軟に変化させうるものでなければならないのです。そのような臨機応変な対応ができるために必要な知見について解説しています。

これらの講義の他に「専門ゼミナール」と「卒業論文」も担当しています。専門ゼミナールでは、教育心理学に関する文献をみんなで読みあい、議論します。文献の内容を理解するだけでなく、心理学的な問題のとらえ方、分析の仕方にも親しんでもらうこともねらいの一つです。卒業論文では、専門ゼミナールでの学習をふまえて、それぞれ関心のあるテーマについて研究を進めていきます。これまでの卒業論文の中には、専門の研究会で発表されたような本格的なものもあります。大学院にすすんで、卒業論文のテーマをさらに発展させた学生もいます。
「教育心理学」というと非常に特殊な分野のように思われるかもしれません。しかし、人間関係のあるところ、広い意味での「教育」が必ず存在しています。「教育」というフィールドを介して、心理学の広大な世界を探検してみようという方、お待ちしています。

(工藤与志文教授は2009年9月に退職しました。)

  • 発行日: 2008.04.01